気管支ぜんそくの症状
- のどが「ゼーゼー、ヒューヒュー」いう喘鳴
- 呼吸困難
- 発作性の激しい咳、痰(夜間、運動後に多い)
- 急に動けなくなる
- 胸の痛み
- 動悸、息切れ
- 背中の張り
気管支ぜんそく
Bronchial asthma
気管支ぜんそくは、気管支が慢性の炎症により狭窄や過敏状態を引き起こし、発作性の呼吸困難や咳・痰を生じる病気で、その背景にはアレルギーが関与していることが多いと考えられています。治療としては、気管支拡張薬で狭くなった気管支を拡げることだけでは不十分で、ベースにある炎症を抑える「抗炎症療法」が最も大切です。ぜんそくの患者様では、たとえ症状が無くても気管支の炎症が水面下で続いていることが多く、抗炎症療法を一定の期間止めずに続けることが、難治化を予防する点からも大変重要です。現在の治療では、抗炎症療法の中心となるのは吸入ステロイド薬です。吸入方法を正しく理解することで、安全に効果的に治療を進めることができます。
日本では、こどもの5~7%、大人の3~5%が喘息(ぜんそく)にかかっているといわれています。
こどもの喘息(ぜんそく)は男子に比較的多く、アレルギーが原因である場合が60〜70%とされています。小学校高学年ぐらいから発作がなくなる時期がありますが、20~30歳代に再発することもあります。
大人の喘息(ぜんそく)の6~8割が大人になって初めて発症した人たちで、男女比は女性がやや多くなります。こどもの喘息(ぜんそく)に比べ、原因はアレルギー、加齢、肥満等様々です。
①アレルゲンとなるもの |
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②アレルゲン以外の原因 |
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ぜんそくを診断するには、症状の問診以外に次のような検査を行うことで総合的に判断します。
①アレルギー検査 | 皮膚テスト(プリックテスト)や血液検査(特異的IgE抗体検査)を実施しアレルゲンに対する反応を調べ、ダニやホコリ、動物、カビなどがぜんそくの原因かどうかを調べます。 |
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②酸素飽和度(SpO2)測定 | ぜんそく発作の重症度は「小発作」、「中発作」、「大発作」、「呼吸不全」に分けられ、発作の程度が大きいほど酸素飽和度(SpO2)が低くなる傾向があります。 ぜんそく発作の重症度によって治療方針が異なるので、治療方針を決める上で非常に重要な項目です。 |
③肺機能検査(スパイログラフ) | ぜんそく発作が出ていないときに気道の狭さを調べることで、本来のぜんそくの重症度を検査します。 肺機能を調べるために、大きく息を吸ってから、できるだけ強く、早く息を吐き出すことを行う必要があるので、6〜7歳以上のこどもでないと実施が難しいというデメリットがあります。 他に気道粘膜の炎症程度を調べる呼気NO検査があり、6〜7歳以上のこどもで実施可能です。 |
④胸部X線検査 | ぜんそくが重症化し、肺炎や気胸など他の病気を引き起こしていないかの確認を行います。 |
ぜんそく治療に使われる薬は大きく分けて「長期管理薬(コントローラー)」と「発作治療薬(リリーバー)」に分けられます。治療の基本は、気道の炎症を抑える「長期管理薬」です。
「長期管理薬」は2本だてです。最も重要なひとつめの薬剤は「吸入ステロイド薬」です。ぜんそくの症状は気道の炎症が原因で起こります。その炎症を抑え、発作を予防するのが「吸入ステロイド薬」です。「吸入ステロイド薬」が普及してから、ぜんそくで亡くなる人や入院する人の数が大幅に減少しました。
もうひとつの薬剤は、気管支を広げる「気管支拡張薬」です。「気管支拡張薬」には、長時間作用性β2刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤、長時間作用性抗コリン薬などがあります。ロイコトリエン受容体拮抗薬やテオフィリン製剤は、気管支拡張作用と抗炎症作用をあわせもっています。症状に応じて、これらの中からひとつ、あるいはいくつかの薬剤を用います。
吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬を配合した薬剤は、1剤で炎症を抑え、気管支を拡張するため、広く用いられています。
長期管理薬は長期間使ってはじめて本当の効果が現れる薬です。使い始めてすぐに症状はおさまりますが、気道の中の炎症は続いています。症状がないからと途中でやめてしまわず、医師の指示通りに続けることが重要です。
ただし、2~4週間使用しても症状が改善しない場合は、ぜんそくでない可能性もあるため、主治医に相談しましょう。
①副腎皮質ステロイド薬 |
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②長時間作用性β2刺激薬 | 交感神経を刺激して、気管支を広げる働きがあります。長期管理薬として使う場合は、吸入ステロイド薬と併用するのが基本です。 |
③吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬配合剤(吸入薬) | 1剤で気管支の炎症を抑える効果と、気管支を広げる効果があります。 |
④ロイコトリエン受容体拮抗薬 (飲み薬) | 気管支を収縮させる作用に深く関係しているロイコトリエンという化学伝達物質をブロックする働きがあります。 |
⑤テオフィリン徐放製剤(飲み薬) | ゆっくり溶ける作用時間の長い薬で、気管支を広げる働きがあります。また、弱いながらも、抗炎症作用があることも報告されています。 |
⑥長時間作用性抗コリン薬(吸入薬) | 気管支の収縮をうながすアセチルコリンという物質をブロックし、気管支の収縮を抑える働きがあります。 |
⑦ロイコトリエン受容体拮抗薬以外の抗アレルギー薬 (飲み薬) | 気管支の収縮を引き起こす物質の放出を抑えたり、アレルギー炎症を起こす物質の産生を抑えたりします。 |
発作が起きたときに使うのが、発作治療薬(リリーバー)です。気管支を広げる働きがあり、すぐに効き目が現れます。しかし、気道の炎症を抑える働きはないので、ぜんそくの根本的な治療にはなりません。長期管理薬を使わずに発作治療薬だけに頼っていると、気道の炎症が進み、ぜんそくが悪化してしまいます。
①短時間作用性β2刺激薬(吸入薬)(飲み薬) | 交感神経を刺激して、気管支を広げる働きがあります。 |
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②テオフィリン薬 飲み薬 | 気管支の緊張をとって、気管支を広げる働きがあります。 |
医師はまず、問診で患者様の症状がどのくらいの頻度で起こっているのかなどを把握するとともに、呼吸機能検査や呼気NO検査の結果などをもとに、患者様の状態を判定します。そして、一人ひとりの重症度に応じて、使う治療薬の種類や量、組み合わせなどを決定します。
①軽症間欠型相当 |
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②軽症持続型相当 |
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③中等症持続型相当 |
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④重症持続型相当(小児でもほぼ同様) |
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ぜんそく治療における大きな目的は、症状や発作が起こらない状態(コントロール良好な状態)を保つことです。該当するステップの治療を行い、症状が出ない状態が3~6ヶ月持続すれば、治療をステップダウン(薬の種類や量を減らす)することも可能です。
症状が出なくなったからと自分の判断で治療を中止してしまわずに、医師の指示通り治療を続け、コントロール良好な状態を持続できるようにしましょう。
風邪、インフルエンザ、百日咳、マイコプラズマなど、感染症によっても発作性の咳が出ます。感染症による炎症がきっかけとなり、喘息(ぜんそく)を発症することもあります。また、長く続く咳が結核やがんであることもあります。
風邪などはセルフケアによって短期間で治ることも多いのですが、感染力が強い、重症化しやすいなど、抗菌薬による治療が必要となる感染症もあり、症状が激しい場合や長引く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
①百日咳 | 最近成人に増えている。2週間以上の発作性の激しい咳 |
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②マイコプラズマ | 高熱が出る。もともと喘息(ぜんそく)があると悪化させる |
③結核 | 微熱がある。胸部X線で鑑別 |
④急性気管支炎 | 風邪やインフルエンザをこじらせて発症 |
⑤副鼻腔気管支症候群(SBS) | 慢性副鼻腔炎、慢性気管支炎、気管支拡張症が合併 |
⑥アトピー性咳嗽 | のどのかゆみ、空咳など、アレルゲンがある |
⑦胃食道逆流症(GERD) | 痰はない。胸やけがある。胃の治療で改善 |
⑧後鼻漏 | 鼻水が気管に落ちる。慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎が原因とされる |
⑨心因性咳嗽 | 小児に多い |
⑩肺がん | 血痰、胸や背中の痛み |
①肺水腫 | 心機能が低下して起こる、喘息(ぜんそく)によく似た症状 |
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②COPD | 喫煙がおもな原因。咳、痰、息切れがある |
③過喚気症候群 | ストレスなどによって起こる過呼吸 |
①花粉症などアレルギー性鼻炎 | 花粉などアレルゲンの増加する時期は喘息(ぜんそく)も悪化する。ぜんそく患者の50〜80%に合併する。 |
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